動中の工夫

坐禅コミュニケーション

チェック業務の工夫

 大森曹玄老師曰く、

「電話局に勤めていた一禅友が、こういう話をしてくれたことがある。三十数年も前のことだから、今とは現場の様子はちがっていようが、原理は同じことである。その友人は局で自動接続の装置の故障を調べる係で、毎日自分の受け持つ機械を見るのが仕事である。かれはその機械と自分とが一つになるように心がけ、三昧の境にはいって無心で巡回していると、フト無意識のうちに手が動いて機械にふれる。調べてみるとそれは故障、もしくは故障直前のものであることが多い。そこでますます動中の工夫に励んで、機械との一体化に努力したという。これなど只管仕事のよい実例であろう」(『参禅入門』134頁)

 いかに仕事がチェック業務であるとはいえ、心のどこかに「間違っているはずはない」「故障しているはずがない」などと先入観を持っているものである。

 その先入観が、坐禅修行と只管仕事の動中の工夫によって消え、モノと行為と隔たりがなくなりモノがしっかり観察できたのであろう。