動中の工夫

坐禅コミュニケーション

禁煙から学んだこと

 私には悪癖が多い。髪の毛を触る・爪を擦る・力むとき舌を噛む・歯を舌でグラグラさせるなど。気になる人には本当に気になるらしい。いわいる強迫行為というものか。このようなものにはいままでに身に付いたマイナス思考などの「心癖」も含まれよう。

 ついこないだアレン・カー『禁煙セラピー』を読んで、禁煙を決意した。この本は実に良くできている。以下にその特徴を挙げる。
・この本を持っていることで形から禁煙にはいることができる。
・禁煙中に吸いたくなるポイントの対処法をすべて把握させてから禁煙させる。これは認知行動療法の理論と関係あるかもしれない。禁煙に入る前に吸いたくなる状況下の認知法をあらかじめ把握させている(予習させている)ので圧倒的に止めやすい。
・「禁煙をエンジョイしているんだ」という発想法をとっている。
・一般にだまされやすい人ほど禁煙しやすいように思えるが、この本では疑り深い人ほど細部まで読みたくなるように書かれている。すなわちハウツーをまとめたページがなく、何回も読み返したくなるように出来ている。

 この本の「禁煙」という目的を「禁強迫行為」とか「脱ひきこもり」とかさまざまな目的に置き換えてみると大いに利用価値があるのではないか、そう思っている。以下に悪癖と闘うことをエンジョイしたくなる語録を集めた。

脳トレの川島教授曰く、「脳の衰えは抑制力の減退から始まります。貧乏ゆすりなどの悪い癖をぐっとこらえてみるだけで脳のトレーニングになるのですよ」(『脳を鍛える大人のDSトレーニング』教授語録)
・井上希道老師曰く、「習慣を破る一番良い方法は、習慣に逆らうことである。(中略) そうした習慣の動きに逆らうとは、手っ取り早く言えば速度を十分の一に落としてゆっくり動作することである。そのことを守ろうとすればどうしても注意を怠る訳には行かなくなる。更に注意の密度を上げて、そこに心を置いて成り切って行けば、自ずから今の事実と親密になって来る。事実は常に現実の今の一瞬の世界であるから、その事に焦点を併せておれば、自然過去の頭とは一線を画することになる。」(井上希道『坐禅はこうするのだ』22頁)