動中の工夫

坐禅コミュニケーション

静から動へ(1)―坐を起つときの注意―

 私の言っている坐禅会の古参方の動きの美しさといったら筆舌しがたい。朝の5時だというのに掃除をテキパキとすすめる。この起ち居振る舞いにあこがれたのが坐禅を続ける動機にもなっている。どうしたら坐禅中の定力を動中でも維持できるか?

 大森曹玄老師は「静から動へ、坐禅から日常生活への転回点として」、坐を立つときの工夫を重要視している(大森曹玄『参禅入門』124頁、講談社)。大森老師は「定めた時間を坐り終わって禅定から起つとき、やはりからだを左右に揺り動かすことを数十回するがよい。その方法は入定のときとは反対に、はじめは静かに左右に動かし、だんだんにその振幅を大きくする」(同書、125頁)、「定から起っての後も、あたかも母親が愛児をしっかりと胸に抱いてたいせつに護り育てるように」(同書、126頁)、「三十分の坐による定力も、初めは坐を起てば即座に失われてしまうかもしれない。それが、方便工夫により、五分つづき十分つづくようになる」(同書、127頁)と述べている。

 「卒暴として」起つことは避けた方がよい。私は何度も足首を挫きそうになったことがあるし、何度か転倒している。しびれているときは感覚が失われているので、どれくらい脚に力が入るかわからないのである。また目眩・起立性低血圧による危険もあろう。一人で坐っているなら肩や脚などストレッチしながら、ゆっくり起つ方が安全である。

 ほかにも静から動への移行の工夫として、太極拳・居合い・経行などがあろう。わたしは平素より廊下を歩くとき静かに歩くように心がけている。