動中の工夫

坐禅コミュニケーション

ほめられたときの反応

 最近のコミュニケーションスキルの教科書は「アサーティブ」ということに重きを置いている。読んでみると、「こんなに率直でよいの?」と思ってしまう。ほとんどがアメリカ人の教科書だからか?自閉症スペクトラムの方はむしろどうやって相手の感情・場の空気を読むか、などが知りたいのではないだろうか。わたしは「相手の感情・場の空気を読みかた」が苦手だからえらく親密さを欠いたやりとりになってしまっている。「相手の感情・場の空気を読みかた」を土台にしてはじめて「アサーティブ」が活きてくるのだと思う。

 「アサーティブ」ということで私が難しさを感じるのは、ほめられたときの反応である。まったく謙遜しないのはよくない(日本や特に中国では)。しかし謙遜しすぎると相手は何のためにほめたんだろうと思うこともあるだろう。いつしかもうほめるのはやめようと思うかもしれない。交流分析では人が人と交流する際の相手に対する投げかけを「ストローク」と呼んでいるが、高橋久は
1.肯定的ストロークはいくら与えてもなくなることはない!だからどんどん与えよう。
2.肯定的ストロークはどんなに求めてもかまわない!だから遠慮なくもらおう。
3.肯定的なストロークは遠慮なく受け取ってかまわない!相手の喜びにもなる。
4.欲しくないストロークは受け取らなくてもかまわない!遠慮なく辞退しよう。
5.自分にストロークを与えても全くかまわない!心の財布にプラスのお金をどんどんプレゼントしよう。
『(対人関係力を日増しに高めるEQノート』、138頁)
と述べている。このうち3がほめられたときの反応の参考になろう。

 ポイントは「わたしはOK」の基本的構えをくずさないことだと思う。自分をディスカウント(安売り)してしまうとかえって人間関係は上手くいかなくなる。「わたしはOK」の基本的構えをくずさなければ、謙遜しても素直に喜んでもよいのである。「私もOK、あなたもOK」の構えを維持することが対人関係における「動中の工夫」ということになろうか?