動中の工夫

坐禅コミュニケーション

ヒューマンエラーを防止する工夫

 最近、人間工学からミスを防ぐアプローチが研究されている。結論は「当事者だけの責任にせず組織全体で取り組め」みたいな話になる。これは企業倫理が声高に叫ばれる現在、本当に大切なことになっていると思う。

 ところが、現場の最前線で働く前衛部隊員に組織全体を動かしていく力は大抵ない。だから自分がミスをしないという自助努力が必要となる。

 私はミスってのは2つに大別されると思う。
1.種に根ざしたミス:「人間だもの」そこは間違えやすいよね、とミスに対し他人も共感できるミス
2.個に根ざしたミス:他人から見ると、何でこんなところでミスしたのと思うような不可解なミス。例えばAさんは小学生の頃7×7=48と一度覚えてしまったため、49と覚え直した今でも、他人に比べると7×7を間違えやすい。これは個人の認知に問題がある場合である。

 だからミスを防ぐには、1タイプのミスの事例を集め良く研究しておく。2タイプのミスは自分で認知のゆがみを把握して修正していくしかない。築山節氏は「繰り返しする失敗には、脳の悪い使い方や機能の低下が分かりやすく表れています」(『脳が冴える15の習慣』162頁)と述べ、「「失敗」ノートを書こう。自分の批判者を大切にしよう」(同書、161頁)と提案している。

 名薬剤師との誉れが高い清水藤太郎先生曰く「誤りはその人に属し、その人の注意によってのみ避けることが出来る」(『調剤規範』)と。

 コツとしては具体的かつ身体的なアドバイス・教訓を標語にしてみると良い。たとえば「PC入力は左から右へ、上から下へ」とか、清水藤太郎先生の例では「処方を2回精読し、必要があれば参考書と引き合わせて全体を十分理解し誤りのないことを確かめた後、調剤に着手する。処方は初め個々の薬物に注意し、次に全体を通覧する」(『調剤規範』)などである。「集中しろ!」とか「なんとなくやるな!」などは最悪の例であろう。