動中の工夫

坐禅コミュニケーション

タケノコの味噌汁―土壌の力を慮る―

 最近、隣の林にマダケがたくさん生えているため、庭にタケノコがたくさん生えてくる。だから毎日、味噌汁の具はタケノコである。マダケのタケノコは味噌汁には最適である。思えばモウソウチク・ハチク・マダケと毎年様々なタケノコを無料で食している、有り難いことだ。ただし、もし家を一年間何も手入れしなかったら、庭はあっという間に竹林になってしまうであろう。

 三島次郎『トマトはなぜ赤い』という生態学の名著、この16章「つくられた地球―大気と土壌―」は大変面白い、皆様も是非読んで頂きたい。我々が恩恵を与っている土壌は、岩石の風化、植物や動物の働きによってつくられたということが述べられている。特に「植物の根が土壌の流出を物理的に防ぐばかりでなく、雨水等で絶えず下方へ下方へと移動していく栄養塩を、下の相から上方へ持ち上げる栄養塩ポンプの役割を果たしている。(中略)肥沃な土壌は豊かな植生を育て、植生は土壌を育て、保持していく」(上掲書、190-191頁)。

 したがって「土壌の流出、大きな開発にともなう土壌の移動などは、営々として作られてきた生物と地球との素晴らしい共同の作品を無神経に破壊してしまうことになる。元通りに回復するにはそれこそ気の遠くなるような長い年月を必要とすることになる」(上掲書、192頁)と章を結んでいる。

 毎年毎年、食卓にタケノコを届け続けてくれる「土壌の力」について感謝し、その力は大きいけれど脆いという事実に思いを馳せるのである。