動中の工夫

坐禅コミュニケーション

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現在、緊急事態宣言が出て、人と人との接触を8割減らしましょうということになっている。これによって経営が難しくなったり、収入が無くなって困窮する方々も出てきている。そうでない人たちにも外出ができないということがストレスになってきているようだ。

 

社会全体の価値観が新型コロナウイルス以前と以後で大きく変わってきている。「コンクリートから人へ」に似た概念で、薬局業界では「対物業務から対人業務へ」というスローガンがある。しかし新型コロナ以後では、対人業務が軽視されるというわけではないが、人と人との接触をできるだけ避け、医薬品の供給という物質的な兵站機能が再び重視されることになった。

 

まことに不謹慎ながら、私はこのような状況にむしろ生きやすさを感じてしまった。実はこういった人は多いかもしれない。これまで社会人に必要なスキルはコミュニケーション能力と口酸っぱく言い聞かされ、対人の会話は苦手だが職人気質の人々は肩身の狭い思いをしていた。コミュニケーション能力偏重だった社会に変化が起きて、新型コロナ以前にスポットを浴びていなかった人たちが輝く場所が生まれそうな希望がある。対立を煽るわけではなく、現下の状況で力を発揮するタイプの人間の力も活かしてこの難局を乗り切ってゆけたらと考えている。

 

外出自粛が叫ばれる中で、インドにおける四住期(学生期、家住期、林住期、遊行期)をつい連想してしまう。四住期では人生を以下の四つの期間に分ける。

  • 学生期:師匠について学ぶ期間
  • 家住期:仕事(社会生活)をして家庭を築き、子供を育てる期間
  • 林住期:世俗を離れ森林に隠棲して修行する期間
  • 遊行期:一定の住所をもたず乞食遊行する期間
林住期 (幻冬舎文庫)

林住期 (幻冬舎文庫)

  • 作者:五木 寛之
  • 発売日: 2008/09/01
  • メディア: 文庫
 

 

住む場所も人生のステージによって、学校→市街→森林→市街と変化してゆくということと私は解釈している。私が坐禅でお世話になっている和尚も四住期の考え方が好きで、よくお話しになっている。欧米ではリトリートというのが人気のようで、携帯電話などの通信機器からしばらく離れて自然の中でしばらく過ごす「プチ林住期」が流行っていると聞く。外出自粛なので自然のある場所に観光に行くのはオススメできないが、自宅でも座布団さえあれば坐禅は出来る。

 

家で過ごせる人は家で過ごそうという状況で、それでもストレスが大きいというのも確かだ。HIKAKINと小池百合子都知事の対談動画小池都知事は若い人はネットなどで勉強したり(学生期)するなど時間を有効に使って欲しいと提案されていた。若い人に限らず勉強する環境は整っている。たとえば『孝経』を現代中国語音で読み上げる自習用の動画勝隆一先生)はオススメです。

 

いままで「家住期」であった時間を、上手に「林住期」もしくは「学生期」に移行することで有意義な「#うちで過ごそう」を実現できるものと思う。