動中の工夫

坐禅コミュニケーション

ニュートラルな状態

 達人と呼ばれる人たちはベストなパフォーマンスを発揮する身心のニュートラルな状態にあることに注意を置いているようである。日常生活全般にこのような状態で居れることが禅でいう「随所に主となる」ということであろうか。ニュートラルな状態にいつでも戻れるよう、適切な方法を持つことが大事であろう。

 たとえば野口整体における「背骨に息を通す」とか、自彊術の創始・中井氏の「疲れて何もできないときでもこの運動(筆者注:自彊術体操第十動)だけでもやると、たちまち身体がすっきりする」(近藤芳朗『自彊術―日本最初の健康体操』)とか、立腰教育における「腰骨を立てる」といった方法がある。

 斎籐孝氏曰く、「自分にとって最良のニュートラルな状態に自分を調えるための方法を、ただ一つの技法に集約して提言すること自体が重要である」(斎藤孝『身体感覚を取り戻す―腰・ハラ文化の再生』126頁)と述べておられる。チェックポイントが多すぎると、弊害もでてくる恐れもあろう。